『海と毒薬』遠藤周作

狐狸庵先生こと遠藤周作の『海と毒薬』。
捕虜となった米軍の兵士を、九州帝国大学医学部で解剖人体実験を行った所謂「九州大学生体解剖事件」という実際にあった出来事を舞台にした創作の小説だ。
物語は、いきなり本題に入らず、導入、東京の郊外に引っ越してきたごく普通のサラリーマンの話から進行する。
この男は、肺に持病を抱えており、定期的に病院を訪れなければならないのだが、彼が引っ越した先で掛かり付けとなるのが「勝呂医院」というとても小さな町医者だ。
腕はいいのだがどこか影を感じさせる寡黙なこの医者の事が気になったサラリーマンは、ある時、ふとしたきっかけでこの医者の過去のある事件を知ることになる....。
というあらすじ。
遠藤は、非キリスト教徒の日本人とキリスト教徒のドイツ人・アメリカ人の思考と行動を対照的に描いているのだが、どうも自分には腑に落ちない。
それは、本書が、キリスト教が絶対的な信頼のおけるものという、いわばキリスト教至上主義とでも言おうか、そういったものが前提として作られている点において、自分は違和感を覚えたし、どうも、日本人を否定している感じが否めない。
九州帝大のような事件は、キリスト教国でもどこでも起こりうるものだ。
ただし、クリスチャンと非クリスチャン(欧米人と日本人)という軸を取っ払って、非常時下における人間の心理(日本人論として捉らえず、非常時下における人間の行動)という点に注目して読めば、なるほど本書は良く出来た小説である事は間違いないし、話しの筋も通り、違和感も無くなるだろう。
ともかく、賛否両論のある本ですね。
クリスチャン 罪と罰との 境目は
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